薬剤師×在宅勤務の王道候補。その一つが「DI職」です。
「薬剤師が在宅勤務できる仕事って結局どれなの?」
そう感じている方は多く、検索の上位にも必ず出てくるのが
製薬企業のDI(Drug Information=医薬品情報)職です。
DIと聞くと
「問い合わせに電話で答える仕事?」
「コールセンターみたいな感じ?」
とイメージされがちですが、実際はそんな単純な仕事ではありません。
DIは、製薬企業における“医薬品情報の専門家”として、科学的根拠に基づいた情報提供を行う専門職。
添付文書、インタビューフォーム、治験データ(主に第III相試験)、ガイドライン、最新論文まで幅広く扱い、
医療従事者や患者さんの疑問に正式な回答文書として返す、非常に専門性の高い業務です。
本記事では、薬剤師がキャリアチェンジとして検討しやすく、在宅勤務との相性も良いこの「DI職」について、
仕事内容、年収、必要スキル、メリット・デメリットまで詳しく解説します。
DI(医薬品情報)職とは?
製薬企業のDIとは、医薬品の適正使用を支えるために
医療従事者・患者・社内(特にMR)からの問い合わせに、科学的根拠をもとに回答する専門部門です。
企業によって名称は以下のように異なります:
- DI部
- MIセンター(Medical Information)
- 医薬品情報部門
- メディカルインフォメーション部
役割は一貫して“医薬品に関する公式な回答を行う部署”であり、曖昧な返答は一切許されません。
よくある誤解
- コールセンターのような単純応答ではない
- 添付文書を読めば答えられる仕事ではない
- 電話対応だけをする仕事ではない
実際の姿
- 最新の第III相試験データ
- ガイドライン
- 副作用データ
- IF(インタビューフォーム)
などを根拠に、正式な回答文書(レター)を作成する高度な専門職です。
DI職の具体的な仕事内容
医療従事者・MR・患者からの問い合わせ対応
問い合わせ内容の例:
- 「腎機能が低い患者にはどの用量が適切?」
- 「P3試験では◯◯の副作用はどの程度出た?」
- 「妊婦への投与データはある?」
- 「薬物相互作用の可能性は?」
これらに対し、公式な“企業見解”としての回答を作成します。
回答書(レター)作成
回答書はその企業の“公的な回答”として扱われるため、根拠の裏付けが超重要。
使用する情報源:
- 添付文書
- インタビューフォーム
- 治験成績概要 ピボタル試験(第III相試験)
- ガイドライン
- PubMed
- 医中誌の論文
- 学会の最新データ
薬剤師の文献検索スキル・エビデンス読解力が非常に活かされます。
文献検索・エビデンス調査
PubMedや医中誌を使った検索は日常業務です。
検索ワード設計 有効データの抽出 論文の質の判断 エビデンスの強さを比較する
科学的な思考力がダイレクトに役立ちます。
FAQ・情報資料の作成・更新
- よくある質問を標準化したFAQ
- 治療領域別の解説資料
- 安全性に関する注意情報のアップデート
これらを継続的にメンテナンスします。
安全性情報部門(PV)との連携
副作用の問い合わせが増えた場合
→ PV部門に情報が共有され、シグナル検出につながることも。
PVの対応方針が変われば、DIの回答内容・FAQも更新が必要になります。
在宅勤務はできる?実際のところ
- 回答書作成・文献調査はPCで完結
- 問い合わせ対応も電話・メール・Webで可能
- 会議はTeams/Zoom
- 紙の資料が少なくデジタル化が進んでいる
上記の理由でリモートワークの導入がかなり進んでいるようです。一方で、“完全フルリモート”はまだ少数。
- 入社後しばらくは対面研修が必要
- マニュアル作り、紙文書対応で出社する企業もある
実際のリモート率は会社によって30%〜70%ほどのようです。
DI職の年収
450〜700万円 外資DIは700〜800万円以上も コールセンター寄りDIは400万円台スタートの場合あり 薬剤師手当がつく企業もある 夜間対応のある企業はシフト手当が出ることも
年収アップのためのキャリアパス:
- DI → 学術
- DI → PV(安全性)
- DI → MA(メディカルアフェアーズ)
- DI → ライター(広告)
など選択肢も多い。
DI職のメリット
1. 調剤・病院経験がそのまま活きる
添付文書の読み方、副作用対応、患者背景の理解など、薬剤師の基礎スキルが直結。
2. 医療者に感謝される
問い合わせの回答次第で、「助かりました」「明日の処方に活かせる」といった声が届く。
3. 医薬品情報の“専門家”として成長できる
P3試験データやガイドラインの深い理解まで身に付き、市場価値が上がる。
DI職のデメリット
1. クレームに近い問い合わせがある
特に患者向け窓口がある企業は注意。
2. 回答根拠の精度が異常に求められる
少しでも曖昧な返答は企業リスクに直結する。
3. KPI(応答件数)のプレッシャー
企業によっては1日あたりの対応件数が数値化される。
4. 完全在宅にはなりにくい
研修や対面調整で最低限の出社は必要。
DI職に向いている薬剤師の特徴
- 文献を読むのが苦痛ではない
- ロジカルな説明が得意
- 正確性・整合性を徹底できる
- メールや文章でのコミュニケーションが得意
- 臨床経験(服薬指導・副作用対応)を活かしたい
- 電話対応に抵抗がない
調剤で“疑義紹介が好きだったタイプ”は適性が高め。
DI職の求人の探し方
求人名は企業によってバラバラなので以下のようなワードで検索するのが良いと思います。
- DI
- MI(Medical Information)
- 医薬品情報担当
- メディカルインフォメーションスペシャリスト
- メディカルコミュニケーター
また、コールセンター寄り(アウトソース型)のDI職と企業内DI(メーカー直下)のDI職とでは仕事内容も求められるスキルも違うので見極めが必要です。
面接時に確認すべきこととしては
- 在宅比率
- 研修体制
- KPIの有無
- シフト体制
- どの部署と連携するか
さらに、転職サイトは必須。
条件が細かく変わる職種なので、転職サイト・エージェントで事前確認すると失敗しづらいです。
【まとめ】DIは薬剤師の“強み”が最も活きる在宅職の一つ
DI職は、薬剤師として積み重ねてきた経験が最もダイレクトに活かせるキャリアのひとつです。
調剤業務で自然と身に付いている添付文書の読解力、服薬指導で培った説明のロジック、副作用対応の知識──こうしたスキルが、企業では“医薬品情報の専門家”として大きな価値を持ちます。
問い合わせに科学的根拠をもとに回答する仕事は、一見地味に見えるかもしれません。
しかし、医療従事者の疑問を正確に解消し、日々の処方判断を支えることは、患者さんの安全につながる重要な役割です。
調剤室では見えにくかった「医療全体に貢献する実感」が得られるのも、DIならではのやりがいだと思います。
また、回答文書の作成や文献調査など、PC上で完結する業務が多いため、在宅勤務との相性が良い点も魅力です。
もちろん、完全在宅とまではいかないケースが多いものの、“働く場所を選びやすい”というメリットは確かにあります。
一方で、要求される正確性の高さやKPIのプレッシャーなど、大変な面もあります。
ですが、科学的なエビデンスを大切にする姿勢や、丁寧なコミュニケーションができる薬剤師にとっては、その専門性を十分に発揮できる環境です。
もしあなたが
「もっと専門性を伸ばしたい」
「医療に深く関わりながら在宅で働きたい」
「臨床経験を別の形で活かしたい」
と感じているなら、DI職は確実に候補に入る職種です。
薬剤師として築いてきた力は、想像以上に価値があります。
DIというキャリアを通して、それを新しい形で発揮してみてください。

